静岡県静岡市駿河区丸子、東海道丸子宿(まりこしゅく=鞠子宿)で、慶長元年(1596年)創業の老舗が、丁子屋(ちょうじや)。歌川広重の『東海道五十三次』にも描かれる街道名物のとろろ汁は松尾芭蕉の句(梅若菜丸子の宿のとろろ汁/『猿蓑巻の五』)や十返舎一九の『東海道中膝栗毛』にも登場。
街道時代に、旅する人の楽しみだった「とろろめし」を味わう
現在の丁子屋の店構えも当時の面影を残す茅葺き屋根の店構えで、特産の自然薯(じねんじょ)を使ったとろろ汁は自家製味噌の出汁(だし)で伸ばすので風味豊かなのが特徴。
北海道産の大豆100%でつくった白味噌も木樽で半年間発酵させるという味噌屋顔負けのこだわり。かつお節もなんと自家製。
「既成のものと比べ、断然、香り高くとろろを支える」とのこと。
自慢のとろろ汁に麦入りご飯、味噌汁、お新香、薬味がセットの「丸子」などセットで味わうことができます。
松尾芭蕉の句「梅若菜 丸子の宿の とろろ汁」は、元禄4年(1691年)正月、江戸に出発する門人・乙州(おとくに)に与えた餞(はなむけ)の吟。
江戸に向かうなら、鞠子の宿では名物のとろろ汁を食べる、旅にはまことによい時節ですよと道中の多幸を祈る句です。
『東海道中膝栗毛』では、弥次さん喜多さんは「名物とろろ屋」に入ったものの、店の夫婦の口げんかのためこぼしたとろろでスッテンコロリン。
「けんくはする夫婦は口をとがらせて鳶とろヽにすべりこそすれ」と詠んでいます。
店の外には芭蕉句碑、十返舎一九の碑も立っているほか、店内には丁字屋資料室も設置されています。
「丸子宿は、京に向かう旅人は宇津ノ谷峠という東海道屈指の難所を控えて旅の英気を養い、逆に江戸への人は疲れて体力を回復したかったので、俗にゴボウ5時間、ニンジン2時間、卵たちまち、山芋やたらと呼ばれた自然薯パワーにすがったのでしょう」(12代目・柴山信夫さんの話)。
実は、現在の茅葺き屋根は、12代目・柴山信夫さんが古民家を移築して、歌川広重の浮世絵『東海道五拾三次 鞠子・名物茶店』に似せた店構えにしたもの。
さらには、丸子宿の町並みの保全にも尽力したのです。
当主は14代目となる柴山広行さん。
創業者の丁子屋平吉を襲名し、「原点回帰」の気持ちで店を切り盛りしています。
丸子宿には臨済宗の名刹、吐月峰柴屋寺もあり、宇津ノ谷峠も近いので時間があれば寄り道を。
丁子屋 | |
名称 | 丁子屋/ちょうじや |
所在地 | 静岡県静岡市駿河区丸子7-10-10 |
関連HP | 丁子屋公式ホームページ |
電車・バスで | JR静岡駅から静鉄バス藤枝駅行きで25分、吐月峰入口下車、徒歩3分 |
ドライブで | 東名高速道路静岡ICから約6km |
駐車場 | 80台/無料 |
問い合わせ | 丁子屋 TEL:054-258-1066/FAX:054-257-1234 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |