富士山に何回も登ったことのある人でも、意外に知らないのが「プリンスルート」。通常は表富士側(静岡県)の富士宮ルート、山梨県側の吉田ルートが使われ、須走ルート、御殿場ルートがそれに加わりますが、「プリンスルート」は超穴場で、しかも喧騒を避けて山頂を目指すルートになっています。
富士宮口(標高)と御殿場口(登山者少)のいいとこどり
山好きで知られる今上天皇は、皇太子時代に2回、富士登山にチャレンジしていますが、初回は昭和63年、御殿場口からで、悪天候に阻まれて断念、2回目に選んだのが、後にプリンスルートと称されるようになった登山ルートです。
1回目もポピュラーな富士宮ルート、吉田ルートを選ばなかったのは、混乱を招き、警備にも支障がある登山者が多い人気の登山道を意図して避けたのだと推測できます。
しかし、御殿場口は、4ルート中、最も登山者が少ないため、静かに登山ができ、しかも東側にあるので、山頂まで到達せずとも、登山道途中から、ご来光を拝むことができるというメリットがあります。
最大の難点は、出発点の標高が低く(御殿場口5合目は嵩上げした5合目で標高は標高1440mと、富士宮口、吉田口に比べて1000mも低い場所)、登山道の標高差もあり、距離が長いため健脚向き。
しかも他のルートに比べて山小屋が少ない(トイレや休憩場所が少なく、緊急時に対応できる施設がない)というデメリットもあります。
こうした難点を解決したのが、プリンスルート。
出発点は、表富士側(静岡県)の富士宮口5合目(富士山スカイライン5合目)。
ここから富士宮ルートを登る行列する登山者を横目に、宝永遊歩道に入り(新6合目「雲海荘」まで富士宮ルート登山道を利用することもできます)、樹林帯の中を宝永第一火口を目指し、宝永山馬の背(宝永山分岐)から御殿場ルート6合目に到達するルートです。
宝永第一火口〜御殿場ルート6合目はかつての御中道(おちゅうどう=富士山の中腹を一周した巡礼道)で、コースタイムとしては富士山スカイライン5合目から2時間30分ほどで御殿場ルート6合目に到達できます。
今上天皇が皇太子時代に利用した超穴場の登山ルート
皇太子徳仁親王時代の平成20年8月7日~8月8日、このルートを使って、今上天皇は見事、富士山頂を極めているのです。
宝永第一火口から宝永山馬の背まで、宝永第一火口内の滑りやすい砂礫の登り斜面で、体力の消耗を防ぐことができれば、御殿場口5合目から登るよりもうんと楽ちんなのです。
しかも宝永遊歩道を使えば、森林帯での植物観察、そして宝永の大噴火の大火口と、富士山の魅力も満載(実際には、皇太子徳仁親王は、混雑する富士宮口登山道を新6合目で分かれる御中道ルートを使い、宝永遊歩道を使っていません)。
宮内省に知恵者がいたのか、富士宮口5合目まで車で入って標高を稼ぎ、しかも人の少ないルートを選んだのです。
平成20年8月7日、御殿場口・7合9勺に位置する山小屋「赤岩八合館」(標高3300mに位置)に宿泊。
翌朝6:30、無事登頂、さらにお鉢巡りを行なった後、御殿場口の大砂走り経由で、そのまま御殿場口新五合目まで下り、昼までに下山を完了という健脚ぶりを示しています(南アルプス・北岳登山の際には、同行した機動隊員がバテたので、その人の荷物も持ったという逸話も残す健脚ぶりです)。
ちなみに山小屋「赤岩八合館」の夕食は、手作りの具だくさんカレーで、山小屋から御来光を拝めます。
基本的に男女相部屋の大部屋での雑魚寝となります。
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