【明治を旅する】東海道の要衝・宇津ノ谷峠に「明治のトンネル」が現存!

明治のトンネル

静岡県静岡市駿河区の鞠子宿(丸子宿)と藤枝市岡部町の岡部宿の間にある東海道の難所、宇津ノ谷峠(うつのやとうげ)。平安時代には蔦の細道(つたのほそみち)として知られ、江戸時代にも峠越えの難所でしたが、明治9年に完成、明治37年に修復されたレンガ造りの「明治のトンネル」宇津ノ谷隧道が現存しています。

近代の道路トンネルとしては日本最古

明治のトンネル

隧道(トンネル)としても明治4年7月に竣工した石屋川隧道(東海道線の鉄道トンネル)に次いで近代日本で2番目に完成したという歴史ある隧道で、近代の道路トンネルとしては日本最古で、国の登録有形文化財に指定。
石屋川隧道は現存していないので、現存最古のレンガ造りトンネルということになります。

文明開化とともに、駿河(するが=静岡県東部)では薩埵峠(さったとうげ)と同様に東海道の難所とされた宇津ノ谷峠にも、馬車や大八車(米などを運ぶ人力の荷車)などが通行するようになりました。

初代有渡安倍郡長となった宮崎総五(みやざきそうご=安倍川に橋を架橋するなど道路整備に尽力)の呼びかけで、鞠子宿(丸子宿)・水谷九郎、岡部宿・杉山喜平次ら、有力者7人が結社(現在の会社組織)をつくり、総工費2万6517円96銭の3分の2以上を賄い工事を開始。
すべてが手掘りということで、作業人員は延べ15万人にのぼっています。
莫大な工事費は、大人2厘、子供1厘という有料道路とすることで回収されたため、「日本初の有料トンネル」にもなっているのです。

江戸時代の東海道は宇津ノ谷峠の峠越えをしていますが、その峠近くを全長207m、幅3.2m、高さ3.5mのレンガ造り(坑口から坑内にわたって全面的にレンガ造り)のトンネルで、貫いています。
幅が3.2mしかないのは、当時の東海道が2間(3.64m)幅だったことを考えれば、街道規格といえるものです。

明治のトンネル

明治、大正、昭和、平成のトンネルが現存!

明治29年、隧道内を照らしていたカンテラの失火によって焼失・崩落(照明用に50個ものカンテラを吊るしていました)、明治37年に修復。
明治9年完成のトンネルは、静岡側の抗口は青石を組んだ石造りで、トンネルはくの字に屈曲していましたが、修復時に鞠子宿(丸子宿)側の抗口をズラして直線化しています。
大改修が行なわれているため、修復したトンネルを2代目と数える場合もありますが、明治のトンネルに変わりはありません。

大正時代に馬車の運行が増え、やがて到来する自動車時代に対応するために、大正15年に標高を下げた西側に新道としてトンネルを開削し、昭和5年に完成。
これが2代目となる大正のトンネルで、さらに高度成長、モータリゼーション時代の到来で、昭和34年、昭和のトンネルが完成、東名高速道路が全線開通(昭和44年)を経て、平成2年に国道1号・四車線化の新宇津ノ谷トンネルが誕生して、明治、大正、昭和、平成のトンネル群が生まれています。

『伊勢物語』に登場する蔦の細道以来の、交通史を学ぶフィールドミュージアムにもなっていますが、そのシンボル的な存在が、この明治のトンネルです。

峠の鞠子宿(丸子宿)側にある宇津ノ谷集落とともに、国の史跡に指定。
宇津ノ谷集落から明治のトンネルは歴史散策にも絶好です。

宇津ノ谷集落
宇津ノ谷集落と東海道
【明治を旅する】東海道の要衝・宇津ノ谷峠に「明治のトンネル」が現存!
名称 宇津ノ谷隧道(明治のトンネル)/うつのやずいどう(めいじのとんねる)
所在地 静岡県静岡市駿河区宇津ノ谷、藤枝市岡部町
電車・バスで JR静岡駅から静鉄バス藤枝駅行きで30分、宇津ノ谷入口下車、徒歩15分
ドライブで 東名高速道路静岡ICから約10km
駐車場 3台/無料
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
宇津ノ谷隧道(明治のトンネル)

宇津ノ谷隧道(明治のトンネル)

鞠子宿(丸子宿)と岡部宿の間にある東海道の難所、宇津ノ谷峠(うつのやとうげ)。平安の昔から現在まで東海道はこの宇津ノ谷峠を抜けています。聞き慣れない地名ですが、ユニークなのはここが「道路の博物館」ともいうべき存在なこと。明治9年開通の宇津ノ

宇津ノ谷集落

宇津ノ谷集落

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蔦の細道

蔦の細道

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明治のトンネル

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