黄金崎・三島由紀夫文学碑

黄金崎・三島由紀夫文学碑

静岡県賀茂郡西伊豆町宇久須、夕日の美しさで知られる黄金崎にある昭和36年発表の小説『獣の戯れ』(けもののたわむれ)の一節が刻まれた文学碑が、三島由紀夫文学碑。昭和35年、まだまだ秘境だった西伊豆・安良里を訪れ、宝来屋旅館に滞在したときに生まれた小説が『獣の戯れ』です。

昭和35年、安良里に滞在し『獣の戯れ』を執筆

黄金崎にある三島由紀夫文学碑は、三島由紀夫が自衛隊市ヶ谷駐屯地で割腹自殺後の昭和48年6月10日に建立されたもの。
碑文は三島由紀夫の父、平岡梓(ひらおかあずさ)の揮毫(きごう)。
「船首の左に、黄金崎の代赫いろの裸の断崖が見えはじめた。沖天の日光が断崖の真上からなだれ落ち、こまかい起伏は光りにことごとくまぶされて、平滑な一枚の黄金の板のように見える。断崖の下の海は殊に碧い。異様な鋭い形の岩が身をすり合わせてそそり立ち、そのぐるりにふくらんで迫り上った水が、岩の角角から白い千筋の糸になって流れ落ちた。」という『獣の戯れ』の一節が刻まれています。

新潮社から書き下ろし小説を依頼され、その出版日も昭和36年春と指定を受けた三島由紀夫は、新潮社の編集担当者・菅原国隆から家族で夏旅行したという西伊豆の安良里を勧められ、昭和35年夏、安良里に半月ほど滞在。
『獣の戯れ』では安良里(三島由紀夫の取材時は賀茂村)が伊呂村として描かれています。
「自衛隊や楽器工場の取材もしたかつたので、まづ特急で浜松へゆき、かへりに沼津へ出て、汽車の延着からその日の船に間に合はず、山坂をハイヤーを飛ばして安良里に着いた。作中の主人公が沼津から船で安良里へゆく描写は、私の帰路の船旅を、作中で逆に辿つたわけである。」(三島由紀夫「『夏』と『海』を見に出かける-『獣の戯れ』取材紀行」)

本来は沼津港から定期船に乗り黄金崎の断崖の下を通過する予定が、船に間に合わなかったため、沼津に帰る際に見た景観を、『獣の戯れ』に描写したのです。
当時、西伊豆は山が海岸に迫るため、沼津港を起点とする舟運が重要な交通の便でした(ほかには山越えで東海バスが走っていました)。

『獣の戯れ』の挿絵は、なんと巨匠・東山魁夷(ひがしやまかいい)。
東山魁夷は挿絵の依頼を受け、原稿のコピーを読んだ後、西伊豆の安良里にわざわざ出向いて取材、再び丹念に原稿を読んだとのこと。
「私は次第にこの小説の主人公達の世界に引き入れられて、はじめに心配したのとは反対に、言葉によって形成されている情景なり、心象が、ある時は暗く、グロテスクに、ある時は明るく、のびやかに、私の眼前に生き生きとした形態となってあらわれてくるのだった。」(東山魁夷『初めての挿絵』)
画家として独立した東山魁夷としては、初となる挿絵です。

黄金崎・三島由紀夫文学碑
名称 黄金崎・三島由紀夫文学碑/こがねざき・みしまゆきおぶんがくひ
所在地 静岡県賀茂郡西伊豆町宇久須
関連HP 西伊豆町観光協会公式ホームページ
電車・バスで 伊豆箱根鉄道修善寺駅から東海バス松崎方面行きで1時間、恋人岬下車、徒歩10分
ドライブで 東名高速道路沼津ICから約68km
駐車場 黄金崎研修センター駐車場(70台/無料)、西風が強い日には車に潮が飛ばない根合駐車場もおすすめ
問い合わせ 西伊豆町観光商工課 TEL:0558-52-1114
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。
黄金崎

黄金崎

静岡県賀茂郡西伊豆町にある、夕日を受けると黄褐色の岩肌が金色に輝くことが名の由来の岬が、黄金崎(こがねざき)。三島由紀夫の小説『獣の戯れ』(けもののたわむれ)にも「平滑(へいかつ)な一枚の黄金の板のやうに見える」と記された景勝地で、先端の展

黄金崎・三島由紀夫文学碑

よく読まれている記事

ABOUTこの記事をかいた人

アバター画像

日本全国を駆け巡るプレスマンユニオン編集部。I did it,and you can tooを合い言葉に、皆さんの代表として取材。ユーザー代表の気持ちと、記者目線での取材成果を、記事中にたっぷりと活かしています。取材先でプレスマンユニオン取材班を見かけたら、ぜひ声をかけてください!