静岡県御前崎市(旧浜岡町)の海岸から、内陸に入ったところにある不思議な池が、桜ヶ池。約2万年前に、三方を山に囲まれた窪地が、砂丘によってせきとめられた堰止湖(せきとめこ)で、標高40m、広さは2万平方メートル。池には大蛇が棲み、深さは底なしともいわれてきました。
砂丘地帯、原生林に囲まれた神秘的な池
桜ヶ池周辺は、水を通しにくい泥岩層と周囲のシイ(ブナ)の森で、シイの森が美しい水を生み出し、この水を持ち帰って肌につけると皮膚病が治るともいわれるています。
今でも熱心な信奉者が多く、池の畔には水汲み用の井戸も設置。
緑に包まれた池を眺めていると海岸近くであることを忘れるほどで、初夏ならウグイスの囀りも聞こえてきます。
平安末期の嘉応元年(1169年)、比叡山の僧で法然上人の師でもある皇円阿闍利(こうえんあじゃり)が、96歳の折、末法思想の世相を背景に、人々を救う霊能力を得ようと桜ヶ池で入定し、龍神となったと伝えられる伝説の地。
皇円阿闍利は、56億7千万年後に出現するという弥勒菩薩から直接教えをいただく以外に、悩みから人々を救う方法がないと考え(比叡山で天台宗の教学を学んだ法然が「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えれば、死後は平等に往生できるという専修念仏の教えを説いたのは、皇円阿闍利没後6年)、桜ヶ池に入定し、長寿である大蛇の身に転生しようと考えたのです。
菊川市中内田にある応声教院(おうしょうきょういん=應聲教院)は、皇円阿闍利の入定の地・桜ヶ池を訪れた法然が菩提所と定めた寺。
法然が桜ヶ池に赴いたという記載は、法然聖人絵の『弘願本』(ぐがんぼん)、法然上人伝絵詞『琳阿本』(りんなぼん)、法然上人伝記『九巻伝』(くかんでん)などにも記されているので、浄土宗の聖地だったことがよくわかります。
秋の彼岸の中日には赤飯を詰めたお櫃(ひつ)を池に沈めて龍神様に供える「お櫃納め」(皇円阿闍利を供養したのが始まり)が行なわれていますが数日後に空になったお櫃が浮かんでくるとされ、「遠州七不思議」のひとつに。
長野県の諏訪湖にお櫃が浮いたことがある(諏訪湖にも龍神伝説が残されている)ので、諏訪湖と繋がっているという伝説も生まれたのです。
池の畔には瀬織津比詳命(せおりつひめのみこと)を祀る池宮神社も鎮座。
また、江戸時代中期〜明治時代に隆盛した富士山信仰、富士講の「八海めぐり」では、佐倉湖として、「外八海」(中禅寺湖、榛名湖、霞ヶ浦、芦ノ湖、桜ヶ池、諏訪湖、伊勢・二見ヶ浦、琵琶湖)のひとつに数えられています。
ちなみに桜ヶ池の海岸側にある浜岡砂丘は、御前崎から浜松まで続く南遠大砂丘の一部で、日本三大砂丘のひとつ。
桜ヶ池 | |
名称 | 桜ヶ池/さくらがいけ |
所在地 | 静岡県御前崎市佐倉5132 |
関連HP | 御前崎市公式ホームページ |
電車・バスで | JR菊川駅から静鉄バス特急御前崎サンホテル行きで40分、桜ヶ池下車、徒歩5分 |
ドライブで | 東名高速道路菊川ICから約15km |
駐車場 | 40台/無料 |
問い合わせ | 池宮神社 TEL:0537-86-2309 |
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