静岡県賀茂郡松崎町、松崎を流れる那賀川に架かる常盤橋(なまこ壁の橋)が目の前にある、なまこ壁の美しい建物が、明治商家中瀬邸。明治初期の呉服店兼雑貨店「依田直吉邸」を民俗資料館として開放したもので、母屋横の土蔵は、伊豆半島ジオパークの「松崎ビジターセンター」になっています。
なまこ壁の呉服商家で松崎の歴史をしのぶ

明治商家中瀬邸は、なまこ壁が見事な建物ですが、輸入品の洋釘を使っているのは、貿易港・下田港に近い松崎の豪商だったから。
明治時代、伊豆松崎は早場繭(はやばまゆ)と呼ばれる繭の産地として繁栄し、横浜から下田を経て生糸商人が買付に訪れた地でした。
初繭の取引で注目される伊豆松崎の生糸相場は、当時、ヨーロッパの繭が壊滅的な打撃を受けていたため(微粒子病が発生)、ヨーロッパでも注目されていたほどでした。
明治5年松崎の依田佐二平は、富岡の官営製糸工場に一族の若い女性6人を派遣し、技術を取得、静岡県で最初の製糸工場を松崎に誕生させています(当時は松崎全体に桑畑がありました)。
こうして伊豆を代表する町として発展、豪商が生まれ、贅をなまこ壁のなまこ部分の厚みや、伊豆の長八に代表される鏝絵(こてえ)で競ったのです。
明治商家中瀬邸にも見事ななまこ壁、そして鏝絵が残されています。
中瀬邸と呼ばれていますが、正式には依田直吉呉服店(住居を兼ねて依田直吉邸)。
屋号が「中瀬」だったため、中瀬邸と呼ばれているのです。
母屋(かつての店舗部分)には、往時の反物、商家の道具類、独楽(こま)やまゆ人形などの民芸品が並べられていて、往時をしのばせています。
母屋内に建てられた蔵(資料展示室入口部分)の黒漆喰仕上げのなまこ壁は、松崎町の中でもここでしか見ることができない貴重なものです。
土蔵のうちの1棟は伊豆半島ジオパークの「松崎ビジターセンター」になり、かつて南の海上の島だった伊豆が、日本列島にぶつかって半島になったというスケールの大きな歴史を学ぶことができます。
中瀬邸とともに入館は無料なので、ぜひお立ち寄りを。

明治商家中瀬邸 | |
名称 | 明治商家中瀬邸/めいじしょうかなかせてい |
所在地 | 静岡県賀茂郡松崎町松崎315-1 |
関連HP | 松崎町観光協会公式ホームページ |
電車・バスで | 伊豆急行線蓮台寺駅から東海バス堂ヶ島方面行きで39分、松崎小学校下車、徒歩10分 |
ドライブで | 東名高速道路沼津ICから約80km |
駐車場 | 83台/3時間まで無料、以後1時間ごとに100円 |
問い合わせ | 明治商家中瀬邸 TEL:0558-43-0587 |
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