大井川鐵道の「日本一短いトンネル」には、壮大なドラマが隠されている!?

かつてJR東日本の吾妻線(あがつません)に全長7.2mの樽沢トンネルがあり、名実ともに「日本一短いトンネル」でしたが、八ッ場ダム(やんばだむ)の完成で、線路が水没し新線に移し変わったたため、廃線に。それにかわって、「日本一短いトンネル」かといわれる場所が大井川鐵道にあります。

かつて地名村は、大井川舟運の拠点だった!

その大井川鐵道にある「日本一短いトンネル」は、静岡県榛原郡川根本町、大井川本線・地名駅(じなえき)近くにあり、全長は11m。
地名駅に降り立つと、ホームからも線路の先に「トンネル」を見ることができます。
実際に地名駅から歩いて、「トンネル」に向かうと、上部には草木が生えているのが確認できますが、トンネルというよりも、コンクリートでできた構造物のような感じです。

大井川鐵道の地名駅〜塩郷(仮)駅は、昭和5年9月23日に延伸開業。
地名駅の駅舎も開業当時のレトロなものが現存しています。

正式名は、「川根電力索道用保安隧道」とあり、もともとは、瀬戸谷村滝沢地区(現・藤枝市滝沢)と上川根村沢間(現・川根本町沢間)を結ぶ貨物索道(貨物を運んだロープウェイ)からの荷物の落下を防止するために設けられた構造物。
隧道という名が付いているので、隧道(トンネル)とも思えますが、山を貫いたものではなく、土木構造物という扱いに(正しくは「日本一短いトンネル」ではありません)。
なぜ物資運搬用の索道が架けられたかといえば、集落間の物資輸送ではなく、大井川の電源開発のため。

大井川の上流を目指して鉄道が敷設された時代に、千頭ダム(せんずだむ)を建設の第二富士電力(中部電力の前身のひとつ)は、索道を架設し、湯山発電所に建設資材を運びました。
もともとは大井川を高瀬舟で地名村まで運び、索道に荷を移し替える計画でしたが、大井川鐵道が先に開通したため、第二富士電力がトンネル状の構造物を建設し、鉄道への荷物落下を防いだのです。

大井川鐵道は令和4年9月24日の台風15号での被災以来、川根温泉笹間渡駅〜千頭駅運休が続いており、川根温泉笹間渡駅のひとつ北の駅である地名駅や「日本一短いトンネル」には、目下列車は走っていません。

地名駅から眺めた「川根電力索道用保安隧道」
大井川鐵道の「日本一短いトンネル」には、壮大なドラマが隠されている!?
所在地 静岡県榛原郡川根本町地名335
場所 川根電力索道用保安隧道
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