静岡県側の富士登山は例年、7月10日に開山し、9月10日に閉山となりますが、閉山中でも無雪期なら比較的に手軽に到達できるのが、御殿場口新5合目から寄生火山でビューポイントの二ツ塚(下塚)、四辻を経て幕岩を目指すルート。往路は黒砂(スコリア)のゆるい上りで、帰路は森林帯歩きです。
富士山休養林を歩く自然探勝路
御殿場口新5合目は嵩上げした「新5合目」で、車(マイカー)で登れる日本最高所の富士山スカイライン新5合目(標高2400m)、山梨県側の富士スバルライン新五合目(標高2300m)に比べても、はるかに低い標高1440mで、富士山の登山口のうち最低標高。
丹那トンネルが開通以前、御殿場線が東海道線だった時代には、御殿場口が関東からの富士登山のメインルートで、大いに賑わった時代もありましたが、今では静かな登山ルートになっています。
登山ルートだけでなく、マイカー規制のない「新5合目」ということで、御殿場口新5合目を起点にしたトレッキングもおすすめできます(富士登山期間中もマイカーでアクセスできる唯一の新5合目)。
それが、二ツ塚・四辻・幕岩へのトレッキング。
富士山休養林を歩く自然探勝路です。
御殿場口新五合目は、太郎坊(たろうぼう)と呼ばれ(須走口で祀られていた大天狗・太郎坊権現を明治時代に御殿場口でも祀ったため付いた名称)、一帯は標高が低いにも関わらず、木々の生育しない高山的な雰囲気の場所。
宝永4年(1707年)の噴火で噴出したスコリア(黒色で気泡の多いガラス質の火山礫)に覆われ、ここから上部には樹林帯はありません。
有名な下山ルート(御殿場口7合目から新5合目に至る7km)の「大砂走り」もこのスコリアの「砂漠」です。
御殿場口新五合目駐車場西側の富士登山道から10分ほど歩き、最初の山小屋「大石茶屋」から四辻、御殿庭方面へのトラバースルート(巻道)に入ります。
ゆるやかな登りで富士山腹を巻くように50分ほど歩くと、二ツ塚分岐。
二ツ塚はその名の通り、ペアになった富士山の寄生火山(側火山)で、一帯の地層は、表面が宝永大爆発の宝永スコリア、その下が2000年前の噴火で誕生した二ツ塚スコリアで、さらに下層が2200年前に山頂火口から噴出した湯船第2スコリアとなっています。
二ツ塚分岐からルートを離れ、5分ほど登ると下塚。ルートの西側の上塚が標高1929m、東側の下塚が標高1804mで、噴火で放出されたスコリアが降りつもってできた「スコリア丘」で、2000年前の割れ目噴火によって誕生した丘です。
周囲はスコリア斜面という遮るもののない展望台で、富士山腹でも異色の景観を得ることができます。
二ツ塚から四辻経由で幕岩へ
二ツ塚・下塚で眺望を楽しんだら、もとのルートに戻り、さらに15分ほど歩くと四辻。
四辻は、須山口登山道の2合目で、その名の通り4方向への道が伸びています。
歴史ある須山口登山道ですが、宝永大噴火で登山道は失われ、その後、旧2合8勺(次郎坊)で御殿場口に連絡しています。
東海道線(現・御殿場線)の開通で、御殿場口に人の流れが移り、現在は下山道(須走口登山歩道)として利用されています。
四辻からは須山御胎内方面の下り道を選び、20分ほど下ると幕岩上。
幕岩はかつて山伏の修行場だった場所で、今では木々で囲まれた幕岩溶岩の露頭。
修験の時代には、宝永火山のスコリアなどで、木々がなかったのだと推測できますが、噴火から350年以上を経て、自然回帰が進んでいます。
幕岩から車を置いた御殿場口新5合目へは、富士山の原生林が生い茂る林間歩道で、幕岩が標高1700mなので260mほど下ることになります。
誤ってそのまま真っすぐに下ると須山御胎内に出てしまうので注意が必要です(あまり知られていませんが、幕岩上〜須山御胎内は須山口登山道として世界文化遺産に登録されています)。
起点となる御殿場口新5合目新東名御殿場インターチェンジからおよそ40分。
ほかの登山口へのアクセス道路に比べ、距離も短く傾斜も緩やかなので運転に自信がない人でも不安なく到達できるでしょう。
富士山閉山後もOK! 御殿場口新5合目二ツ塚・幕岩トレッキング | |
電車・バスで | JR御殿場駅からタクシーで30分。富士山開山期間前後はJR御殿場駅から富士急行の登山バス運行 |
ドライブで | 東名高速道路新御殿場ICから約14km |
駐車場 | 第1〜第3駐車場(500台/無料)、富士山開山期間は第2・3駐車場(平日21:00〜翌4:00は閉鎖)を利用 |
掲載の内容は取材時のものです。最新の情報をご確認の上、おでかけ下さい。 |