読売新聞に明治30年1月1日〜明治35年5月11日まで連載された新聞小説が『金色夜叉』(こんじきやしゃ)。前編、中編、後編、続金色夜叉、続続金色夜叉、新続金色夜叉の6編からなる長編ですが、有名なお宮を貫一が蹴り飛ばす、熱海での場面(前編第8章)が1月17日。というわけで毎年1月17日に熱海、お宮の松前で『尾崎紅葉祭』開催。
「来年の今月今夜のこの月を僕の涙で曇らせてみせる」
許婚(いいなづけ)の関係にあった間貫一(はざまかんいち)と鴫沢宮(しぎさわみや)。結婚を間近にしながら、両親の勧めに従って富豪・富山唯継に嫁ごうとする宮と、これを裏切りと感じた貫一は、1月17日の月の夜、熱海の海岸で泣く泣く別れることに。貫一は宮を蹴り飛ばし、復讐のために、高利貸しになる・・・。これが有名な「熱海海岸の場」で、その別れの名シーンに欠かせないのが、お宮の松です。
熱海市では、日本中の人々が、熱海の名を知るきっかけとなった『金色夜叉』の作者・尾崎紅葉の偉業を讃え、遺徳を偲んで、毎年1月17日に『尾崎紅葉祭・紅葉筆塚祭』を開催(『紅葉筆塚祭』は、湯宿一番地前で関係者による神事のみ)。
お宮の松前(東海岸町)を会場にする『尾崎紅葉祭』は、13:00~献花、さらに熱海芸妓による舞踊「金色夜叉」(貫一お宮泣き別れ名場面)の上演があります。また仲見世振興会での「貫一・お宮鍋の振る舞い」、起雲閣での記念講演も。
『金色夜叉』(前編第8章)から抜粋
「吁(ああ)、宮(みい)さんかうして二人が一処に居るのも今夜ぎりだ。お前が僕の介抱をしてくれるのも今夜ぎり、僕がお前に物を言ふのも今夜ぎりだよ。一月の十七日、宮さん、善く覚えてお置き。来年の今月今夜は、貫一は何処(どこ)でこの月を見るのだか! 再来年(さらいねん)の今月今夜……十年後(のち)の今月今夜……一生を通して僕は今月今夜を忘れん、忘れるものか、死んでも僕は忘れんよ! 可いか、宮さん、一月の十七日だ。来年の今月今夜になつたならば、僕の涙で必ず月は曇らして見せるから、月が……月が……月が……曇つたらば、宮さん、貫一は何処かでお前を恨んで、今夜のやうに泣いてゐると思つてくれ」
ヴァイオリン演歌 『新金色夜叉』
作詞:宮島郁芳
作曲:後藤紫雲
1.熱海の海岸を散歩する 貫一お宮の二人連れ 共に歩むも今日限り 共に語るも今日限り
2.僕が学校おわるまで 何故(なぜ)に宮さん待たなんだ 夫に不足が出来たのか さもなきゃお金が欲しいのか
3.夫に不足はないけれど あなたを洋行さすがため 父母の教えに従って 富山一家に嫁(かしず)かん
4.何故(いか)に宮さん貫一は これでも一個の男子なり 理想の妻を金に替え 洋行するよな僕じゃない
5.宮さん必ず来年の 今月今夜の此の月は 僕の涙で曇らして 見せるよ男子の意気地から
6.ダイヤモンドに目がくれて 乗ってはならぬ玉の輿 人は身持ちが第一よ お金はこの世のまわり物
7.恋に破れし貫一は すがるお宮を突き放し 無念の涙はらはらと 残る渚に月淋し
尾崎紅葉祭|熱海市 | |
開催日 | 1月17日 |
時間 | 13:00〜 |
所在地 | 静岡県熱海市東海岸町 |
場所 | 「お宮の松」前 |
関連HP | 熱海市観光協会公式ホームページ |
電車・バスで | JR熱海駅から徒歩15分 |
ドライブで | 西湘バイパス石橋ICから約18km |
駐車場 | 市営東駐車場(320台/有料) |
問い合わせ | 熱海市生涯学習課 TEL:0557-86-6233 |
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