【マンホールで知る町自慢】静岡県引佐町(現・浜松市)

かつて静岡県引佐郡にあった引佐町(いなさちょう)。浜名湖の北岸、通称、奥浜名に位置し、緑豊かな土地柄です。臨済宗方広寺派の大本山、方広寺。東海地方最大規模の洞窟、竜ヶ岩洞(りゅうがしどう)。棚田百選登録の久留女木(くるめき)の棚田と、隠れた観光スポットが豊富です。
そんな引佐町ですが、平成19年の浜松市政令指定都市移行とともに、浜松市北区の一部になっています。
旧引佐町のマンホールの絵柄は、そんな観光スポットではなく、なぜか「ギフチョウ」と「シブカワツツジ」です。
しかしそれには大きな理由があるのです。

絵柄は「ギフチョウ」と「シブカワツツジ」

ギフチョウ(学名Luehdorfia japonica)は、環境省の絶滅危惧II類(絶滅の危険が増大している種)にも指定される日本の固有種の蝶。
引佐町と隣接の浜松市天竜区神沢にまたがる「枯山」(標高548m)が、静岡県内では数少ないギフチョウの生息地となっています。
この地でギフチョウが羽ばたくのは3月中旬〜4月初旬。ギフチョウは「春の女神」とも呼ばれていますが、旧引佐町は、全国でもっとも早い羽化で、「めったに雪を見ない」と地元の人がいう温暖な気候が背景にはあります。

旧引佐町では平成2年にギフチョウを町の天然記念物に指定、浜松市となった現在も「浜松市ギフチョウの保護に関する条例」(市内に生息するギフチョウが、現在及び将来における市民のかけがえのない財産であることにかんがみ、市及び市民等が一体となってその保護を図り、これを次代に継承する)を施行し大切に保護されています。
渋川自然環境保全地域に指定される「枯山」地区にはギフチョウの幼虫が餌にするヒメカンアオイが自生し、そのヒメカンアオイの採取を禁止して、ギフチョウの生育地を保全。もちろん、ギフチョウの採取、捕獲、損傷も厳禁で、万一違反すれば「罰金又は科料に処する」と厳しい処置が・・・。

201512260501
↑ギフチョウ(花はカタクリ)

県指定の天然記念物「シブカワツツジ」

もうひとつの引佐町自慢がシブカワツツジ。
シブカワツツジは、引佐町渋川地区で発見されたことから名付けられた静岡県指定の天然記念物。

樹高は4m~6mにもなり、枝先に、葉を3枚輪生、花を2〜4輪ずつ付けるという特徴があります。ほかでは、三河(愛知県東部)、三重の一部地域だけにしか生育しない貴重な植物で、三重県ではジングウツツジ、三河と引佐町のものはシブカワツツジと区別されています(ジングウツツジは狭義には三重県固有種ですが、最近では区別しない傾向になっています)。

引佐町北部の小高い山の上に約4000本のシブカワツツジ群落地となる「渋川つつじ公園」もあり、開花は、例年5月中旬~6月上旬頃。華やかな紅紫色の花が咲き誇り、花の見頃には『渋川つつじ祭り』も開催されます。

この希少なツツジが、なぜ引佐町に生えるのかといえば、一帯が蛇紋岩(じゃもんがん)地帯というのが大きな理由です。
蛇紋岩は、その名の通り、暗緑色~黄緑色の蛇の皮のような模様をした岩石でNi(ニッケル)、Mg(マンガン)、Cr(クロム)を多く含む超塩基性の岩質。「渋川つつじ公園」は、ほぼ全体が蛇紋岩の露出した岩山です。
塩基性が高い蛇紋岩地帯には、植物が育ちにくく、杉や檜の植栽してもすぐに枯れてしまうのだとか。そんな環境である蛇紋岩地にはシブカワツツジのほか、シブカワシロギク、シマジタムラソウなど「蛇紋岩植物」が生育するのです。
ちなみにこの蛇紋岩、引佐町でいえばミカン農家など農業関係者には嫌われ者ですが、巷(ちまた)のストーンハンターの間では「パワーストーン」としてserpentine(サーペンティン)、serpentinite(サーペンティナイト)と呼ばれて珍重されています。

201512260602
↑シブカワツツジ(ジングウツツジ=神宮躑躅)

『おんな城主 直虎』はここが舞台!

平成29年のNHK大河ドラマは『おんな城主 直虎』(主演・柴咲コウ、脚本・森下佳子)。
女性でありながら井伊氏の当主となった井伊直虎が主人公の物語で、井伊氏発祥の地として遠江井伊谷(とおとうみいいのや/現・静岡県浜松市北区引佐町)は注目されることでしょう。天竜浜名湖線気賀駅近くにある浜松市北区の「浜松市みをつくし文化センター」(浜松市北区細江町気賀369)に、放送に合わせて「大河ドラマ館」も設置されます。

旧引佐町には、井伊直虎の居城だった井伊谷城、井伊直­虎の墓所・龍潭寺などがあり、NHK大河ドラマ決定とともにツアー客なども押しかけています。

関連記事

よく読まれている記事

ABOUTこの記事をかいた人

たけだゆきえ

(一社)プレスマンユニオン事務局長。 全国を取材するかたわら、デザインマンホールに注目しています。なぜなら、そこには郷土の自慢が凝縮されているから。何気ない足下のマンホールが、実は地域活性にとって重要な役割を担っていることから、ウエブマガジン「マンホールStyle」を運営中です!